[ruby-dev:5393] Re: a genericity

ごとけんです

In message "[ruby-dev:5373] Re: a genericity"
    on 99/02/20, Shin-ichiro Hara <[e-mail]> writes:

>原です。

なんか解決「され」そうな予感(汗;

いちお先に言っときますと，僕は Integer と Float の精度は
一般には比較不能であり，Rational は両者よりも高精度である
という立場です．

>それは Rational(1,2) というのは、単なる 0.500000... という
>量を表しているだけでなく「２をかけて１になる数」という理論的
>な概念を表しているからです。あるいは小数点以下何桁でも求める
>ことができるアルゴリズムを与えている、とも言える。
>
>たとえばある正方行列の行列式が０になるかどうかで、あるシステ
>ムの状況が大きく変わるという局面があるとします。それが、
>Rational(0) であれば 0 と断言していい。一方 0.0 ならば計算
>過程のどこかの値が真値ではなく近似値であり、従って別の局面で
>は 0.001 となって、結論が大きく変わってしまう事もあり得るの
>で別の方法で本当に０なのか検証しなければならない。

これに対する反論は2つあります．

まず，そのような場合は精度を指定して計算すべきです．
例にしたがって，正則に関していうと，最初から速度重視で 
prec(Float) で計算するか，さもなくば，prec(Rational) ではなく 
Rational() で作った要素で行列を生成してからはじめるべきです．
つまりこれらの考慮にユーザーが手を抜くかも知れないという
想定はちょっと反則のような気がします．

次に，誤差が混入する恐れがどこにあるかを考えます．
例えば r() を有理数を返す有理関数とするとき，

  r(0.5) == r(1/2) 

に対する安心感は不当でしょうか??
op in {+,-,*,/} である限りにおいて rational op float を 
rational op float.prec(Rational) として計算するなら，
r(0.1) != r(1/10) でしょうし，一般に，Real(num) を
任意の数 num から実数へ有効桁より下位桁すべてを0と
見倣した標準的単射とするとき，

  r(rational) == r(float)
    iff Real(rational) == Real(float)
    iff Real(rational) == Real(float.prec(Rational))
    iff Real(rational.to_f) == Real(float)

がなりたつと思います．ですから，これらの演算に関しては
標準的単射の値が真に正しいときのみ == が成立します．

ただし，有理関数以外にはこれは当てはまりませんので，
例えば sqrt() をニュートン法で実装する場合などは収束判定
条件を指定する必要があります．これが嫌なひとは，
陽に Float に変換してから演算すべきだと僕は考えます．

いいかえると，四則演算に関しては途中で誤差がはいることは
ないと思います．

>一方、Rational(1,2) + 0.1 = Rational(3/5) という計算を
>許すと有効桁数に関する情報が消えているように感じます。それ
>は 3.141591 + 0.00001 = Pi という計算に似ている。さざれ石
>が巌になった様な不自然な感じ。:-)

途中で出てきた Float を勝手に Rational に変換するのが
よくないのは分かりました．でも「途中で出て来た」の
「途中」とはいつでしょうか??

>一方 double + float = double でもいいと思います。
>結論の数値だけ見てどの数字が信頼できるかを判断する事を最初か
>ら放棄している。それは有効桁数はユーザーが自分で意識して計算
>過程全体から管理することを前提としているわけですね。

そうです．数値計算とはそういうモノだと思っています．
ただし，初期値を適切に与えれば済むようなシステムが作れる
だろうとも思っています．
これをヨシとするかどうかが対決の場のような気がしますです．

加えていうなら，有限精度の小数のことを商集合と呼ぶのは，
数値計算的には危険です．Real を実数全体，x, y を Real の元，
[x] を「x を代表元とする Float#== に関する同値類」とすると，
実係数の多項式関数 P:Real→Real に対して  x != y かつ 
[x] == [y] のとき，[P(x)] == [P(y)] が一般にはなりたちません．
a >> 1 に対して P(x) := a*x を考えれば理解できると思います．
このようなことから商集合ということ自体は構わないように
思えるかも知れませんが，商環であるとか商体であるとか
いった誤解を生みやすいのでやっぱり良くないと思います．
言い換えると Float := Real/Float#== に対して，
Real から Float への標準的全射は Real の代数構造を
保存しませんので商と呼ぶのは危険です．

# cf. Francois Robert ``Discrete iterations'', Springer(1980)

>有効桁数の大小とレンジ（表現できる数の幅）の大小が独立なので
>話がややこしくなったみたい。

僕の感覚が倍精度の仮数部53bitかつ整数32bitであることに
育てられているわけですね．CRAY も 64bit な Alpha も
触ったことないのでそうかも知れない．

>> # 実はリテラルと to_s の近さを気にしているのではないかと
>> # 疑っています．Float(0.1).prec(Rational) を表示したとき，
>> # 見た目にすごい分母が出て来るのがイヤなんではないかとか :-)
>
>いや、それはないと思いますよ。確かにイヤだけど。(^^;

ちぇっ，違うのか (^^;;

-- gotoken