[ruby-list:34163] Re: Ruby1.6.7 について

高橋征義です。

mswin32版そのものは詳しくないのですが。

"井上 浩一" <[e-mail]> wrote:
> 最適化について、以下の疑問があります。
(略)
> 4) 開発版を使う 1.7とうものがあるらしいのですが・・・mswin32でも使えるので
> しょうか？

なかむら(う)さんのところ
http://www.dm4lab.to/~usa/ruby/
に、1.7.2をコンパイルしたものがあります。


> Rubyの高速化について
> Rubyはメソッド検索に時間がかかる使命を持っているようですが、
> インラインメソッドというスピード特別区域を設けて、
> 
> inline("x86"){ |x, y, z|
>   mov ax, x
>   mov bx, y
>   mov z, ax
> }
> 
> が動作するようになれば、高速化間違いなしですが、無謀でしょうか？

えーと。
まず、(高速化とはやや異なりますが)最適化の原則は理解されてますか？

「最適化の第１の原則は、**最適化するな**だ。」
    Brian W.Kernighan and Rob Pike,『プログラミング作法』,p227
    (原文の強調は太字)

さらに、まつもとさんの言葉も。

「いくらRubyが開発効率が高い素晴らしい言語からと言って、なにも
世の中のすべてのプログラムをRubyで記述する必要はさらさらあり
ません。実行速度が必要な場合にはCのようなコンパイラ型の言語を
使うべきでしょう。プログラミング言語にも適材適所が必要です。
無理はいけません、無理は。」
    まつもと ゆきひろ／石塚圭樹,
    『オブジェクト指向スクリプト言語Ruby』,p427

この手の質問で理想的なものとしては、「〜というコードを
書いているんだけど妙に遅いです。どうしてでしょう？」とか、
「〜というコードがありますが、○○だと早いんですけど××だと
極端に遅くなります。」というたぐいのものですね(シンプルな
再現コード、プロファイラの結果の抜粋なんかがあると理想的で、
さくっと返事が返ってきたりしそうです :-) )。
井上さんの求めているものは、このたぐいの質問ではなく、まさに
Kernighan and Pikeや、まつもとさんが戒めているタイプのものの
ように見受けられます。
実際、 [ruby-list:34139] で井上さんは「特にRubyで遅いなと思う
のは、requireの部分で実行処理の３分１を占めています。」と
書いていて、今回の話とは全然違うようですし。
[ruby-list:34141]の斉藤さんのリプライは理解・納得されてますか？

# あと、Rubyはメソッド検索はキャッシュを使って高速化を計って
# いるのでは？ (eval.cのrb_callの部分)
# また、インラインメソッドを使ってもメソッド検索の速度の
# 改善とは関係がないのでは？


もっとも、上のまつもとさんの言葉は拡張ライブラリの話をする
ための前振りになっています。「高速化したい部分は拡張ライ
ブラリで書く」というのはRubyでもすでに実績を重ねている
手法で、井上さんの求めている手法も、これで実現できそう
です。拡張ライブラリのCのコードの中でアセンブラを使えば
いいわけですから。

とはいえ、やみくもに高速化を図るべきではないでしょう。ちゃんと
プロファイリングして、ボトルネックを見つけ、そこに焦点を絞って
高速化するべきです(と、上の引用元2冊の両方に書いてあります :-))。

高橋征義 (TAKAHASHI Masayoshi)   E-mail: [e-mail]