[ruby-dev:36059] Re: 1.9と1.8で、delegateのインスタンスのクラス名の違う

山口と申します。

DelegateClassの振舞いが早く確定すると安心できていいなぁ、
と思うので気付いた点を書かせて頂きます。

2008/8/28 石塚圭樹 <[e-mail]>:
> けいじゅ＠いしつかです.
>>というわけで、classに関しては、敢えて1.8の挙動を変更する必要
>>はないと思います。
>
> ただ, 逆にお聞きしたいですが, Ruby1.9の振る舞いで困ることあります?

直せばいいだけのことかも知れませんので
「困ること」に直接該当するかは分かりませんが、
現状の 1.9 の振舞いのまぎらわしい点を三点挙げておきます。

1. Module#===

これは既に石塚さんが挙げられました通りに、
case文において問題となります。

require "delegate"

class A; end
DA = DelegateClass(A)

da = DA.new(A.new)
da.class #=> A

case da
when A ; A
when DA; DA
end #=> DA

2. ObjectSpace.each_object

以下のように ObjectSpace.each_object が
紛らわしいことになります。

require "delegate"

class A; end
class DA < DelegateClass(A)
  def hello; "world"; end
end

da = DA.new(A.new)
da.class #=> A

ObjectSpace.each_object(DA) do |obj|
  obj.hello #=> "world"
end

ObjectSpace.each_object(A) do |obj|
  obj.hello #=> undefined method `hello'
end

da.class は A を返すのに、ObjectSpace でオブジェクトを
取り出す時にはクラス DA を指定しなければなりません。

3. UnboundMethod#bind

エラーメッセージがややこしいことになります。

require "delegate"

class A
  def hello; "world"; end
end

DA = DelegateClass(A)

da = DA.new(A.new)
da.kind_of?(A)     #=> true
da.instance_of?(A) #=> true

m = A.instance_method(:hello)
m.bind(da)
#=> bind argument must be an instance of A (TypeError)

以上に挙げた三点は基本的に C で rb_obj_is_kind_of を
呼び出しているために起きる現象であると思います。
DelegateClass を用いて #kind_of? を委譲したとしても
こうしたものに関してはどうしても無力ですので、
拡張ライブラリにおいても同様に問題になる可能性があります。

従ってもし 1.9 の今の振舞いのままにするのであれば
rb_obj_is_kind_of 及び rb_obj_is_instance_of を
修正しなければならないのだろうと思います。
また同様にして rb_obj_class や rb_obj_classname に
起因するややまぎらわしい状況が成立する可能性もあります。

私はこうした問題が全面的に解決されるのであれば
1.9 の今の振舞いのままで良いと思います。
たとえば Tempfile の例を考えれば、インスタンスがなるべく
File のように振る舞う方が嬉しいのは確かです。

一方もしこれらが解決されない場合
こうしたまぎらわしい場面に直面してしまうと、
ruby の実装に関する知識がないと状況の把握が困難です。
この場合 1.8 の振舞いに戻すのが無難であると思います。

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山口慶太