[ruby-list:13580] Re: What is `binding' (was Re: Ruby and LISP)

In message <[e-mail]>
[e-mail] writes:

> ・束縛とは、広い意味で「変数に値を結び付けること」である事に異論はない。
> その意味では全ての計算機言語において代入は束縛である。

はい．....っていうか，「ruby では『代入』は存在しない．全て（広義の/日
常用語で言う）『束縛』である」っていうのがもともとの私の主張だったわけ
ですが．

『変数』はオブジェクトじゃないから変数に対する操作を考える事はできない．
だから `foo = bar' なる操作は「計算環境中に『変数（シンボル `foo'）』
と値（現在 `bar' に結びつけられているオブジェクト）との対応関係を記録
する」という意味を持つと考えるわけです．

ついでに「環境はスタックになっている」というのを暗黙の内に仮定していた
りして．関数が呼び出される時やなんかに新たな環境が今までの環境の「上に
積まれる」．同じシンボルの解釈は「より上の」環境での結び付きを優先させ
る．何らかの事でいらなくなったら上の環境は捨てられる．そうすると全ての
シンボル-値の結び付きは元に戻る．

# 知っている/理解できる実装にモデルがひきずられている (^^; 典型的には
# 関数呼び出しで新たな環境が push され，その関数を抜ける時に環境スタッ
# クが pop される．


> ・束縛を、狭い意味で「新たに変数を導入してそれに値を結び付けること」と
> いう意味に使用することが特にLisp方面では多い。この意味ではrubyもlispも
> 代入＝束縛ではない。
（略）
> まさにこういうlambda束縛が自分のいいたい狭い意味の「束縛」です。
> 
>   (lambda.x (f (lambda.x (g x))(2), x))(1)
> 
> 内側のlambdaでxが2に束縛される事は、そのlambda内でのみ有効で、それ
> を抜ければ外側のlambdaでxが1に束縛された状態に戻らなければいけません。

稲葉さんがおっしゃっていたのは一貫してテクニカルタームとしての『束縛』
であった，という事ですね．Lisp がラムダ計算の実証系でもあることからす
ると，そこで言う『束縛』が本来「変数の導入とそれへの値の束縛を一まとめ
にしたもの」である，というのは納得です．

環境に関する私の仮定を入れてしまうと.... そうか新しい環境に束縛を加えるのは
シンボルの導入も含んでいるんだな.... この場合『変数』 == 『シンボル』
で問題なく話はまとまったりします．

# そうか，Lisp の場合も『束縛』と『代入』は使い分けてたのか.... 知らん
# かった．setq も let も引数の束縛も全部一貫して『束縛』って言ってた
# なぁ．


ラムダ計算だと『広義の束縛』は『狭義の束縛』とともにしか現れ得ないから
混乱はないんですね．ラムダ計算に『代入』を加えた物を考えた場合『代入』
っていうのは何を意味する事になるんだろう．単にシンボル-値の組を変更す
るだけかな．

# 「代入を含む関数型言語の意味論」についての論文を見た覚えがあるんだけ
# ど，内容が理解できなかった，という以外の記憶がない.... (^^;


> ..うーむ、これを書きながら、変数と変数名（シンボル）を別のものとする
> 見方が誤解のもとなのかなと思い付きました。変数と変数名の区別をつけない
> とすれば、束縛の定義は、「その時点の変数の状態・値を保持しつつ変数に新
> たな値を結び付けること」のようにかえる事になります。

っていうか，『変数』っていうと C や Pascal 風に「そのものがオブジェク
ト」であるかのように感じるんですよね．『シンボル』っていっていたのは意
図的で，「それ自体はオブジェクトではなく環境を参照するのに必要な `名
前' である」っていう事を強く意識していたわけです．

値としてのオブジェクトと，シンボルと値との結び付きを記録した環境だけが
実体であり，『変数（シンボル）』はプログラムの字面上のみに現れる便宜上
の存在に過ぎない．

# で，「Lisp ではシンボルは....」とつながってた．

-- 
柳川和久 @ 東大阪市 . 大阪府                                 April 10, 1999
Out of sight, out of mind.