[ruby-list:11030] Re: スコープの範囲

まつもと ゆきひろです

In message "[ruby-list:10996] Re: スコープの範囲"
    on 98/11/21, Koji Arai <[e-mail]> writes:

|新井です。

|>     Rubyのローカル変数の有効範囲は静的に決まります
|
|「静的」の意味がよくわからなかったのですが、コンパ
|イル時にスコープを決めているということでしょうか？

そうです．まつもとの使う「静的」という単語は十中八九は「コン
パイル時に決定される」という意味で，「動的」というのは「実行
時に決定される」という意味です．

|で、結局は
|「定義より前の"行"で、ローカル変数が有効になることはない」
|ということになる？

「スクリプトの字面」ではその通りです．ただし，evalが絡む場合
はその限りではありません．evalは「コンパイル」も含めて実行時
に発生しますから．

|まぁ、結局は
|「evalは、イテレータと同じようにローカル変数のスコープを持つ」
|ということになる？

で，これは違います．正確には

  evalはコンパイル時に決定されるはずのローカル変数を実行時に
  追加することができる．しかし，その追加されたローカル変数に
  はevalからしかアクセスできない

という事態が発生してます．この挙動はブロック内ローカル変数と
は違う動作です．

|「*いかなる場合でも*定義より前の"行"で、ローカル変
|  数が有効になることはない」
|
|あってます？

evalが絡まなければね．

|「ローカル変数のスコープは定義からブロック(?)の終りまで」
|
|の方がいいかなぁ。

こっちは合ってます．

|局所化されるかどうかを文法で区別できないのは少し痛
|いですね。
|
|イテレータを書くときは、常に局所変数の名前がダブら
|ないように気を使わなくてはいけないですから。

そうですね．名前が重複しているかどうか考えないといけないのは
Rubyの変数システムの数少ない欠点の一つだと認識しています．
# なんか良い手があるかなあ．

|> 【３】定義は、代入を実行することによってなされるのではなく、実行以前に
|>   スクリプト中に代入文が現れたときになされる、
|
|そうだったのか〜。「静的」だからかぁ。

そうです．これが鍵です．

|# perl の local() を実現する (ただし、$global変数だけ)
|# (こういうのを「深い束縛(deep binding)」と言うらしい)

これ面白いですよね．ただ，Rubyとしては $/ のようなグローバル
変数はなるべく使わなくても済む方法も提供する方向で対応しよう
と思います．スレッドのこととかもあるし．

                                まつもと ゆきひろ /:|)